3月31日、板橋区にある内外文字印刷さんに、清水金之助さんの本の文選・植字の様子を見学しに行ってきました。
2月26日にアップした記事にあるように、今回の本は当初、モノタイプ(活字自動鋳造植字機)を用いて必要な活字をそろえ、手作業での植字→校正→印刷と進む予定でした。制作過程を記録・撮影したいというこちらの要望もあり、モノタイプの作業を3月12日(土)に行う予定にしていたのです。……そう、東日本大震災の翌日でした。
震災当日の夜遅くに「延期」の連絡をとりあい、翌朝、内外文字印刷さんにお電話したときには、「活字ケースが落ちて大変な状態だが、機械は大丈夫そう」とのことでした。見た目には特に損傷は見受けられなかったそうです。ところがその後、動かしてみたところ、きちんとした活字が鋳造できないとのご連絡をいただきました。
このため、清水さんの本は文選(原稿にしたがって活字棚から活字を拾い、文選箱に納めていくこと)から手作業で行うことになりました。見学、撮影にうかがいたいという私たちのために、内外文字印刷さんでは当日までに、作業に支障がないよう活字ケースを馬棚に戻してくださったようです。訪れてみると、別の棚にはまだおさめられていない活字ケースがいくつか床に置かれていました。ほんとうに大変ななか本づくりを進めていただけることに、改めて感謝しながら、作業を見せていただきました。
▲清水金之助さんの本の原稿と辞書、そして活字。
▲文選の様子。原稿を見ながら、一文字一文字、棚から活字を拾っていきます。拾った活字は文選箱へ。
▲文選された活字を、原稿と組み付け指定を見ながら、植字職人さんがあっという間に組み上げていきます。スペースにはインテルや約物を入れ、またたくまに体裁を整えて組み上げていくあまりの速さに驚きました。見学陣から思わず「ブラインドタッチ!」という言葉がもれたほどのスピードでした。
▲組み上げると、崩れないよう1頁ごとにタコ糸で縛り、固定します。
▲そして校正機で校正刷り。
▲刷り上がった校正刷りがこちら。本文の1頁目です。ゲタ(〓)がずいぶんあるのがわかります。ゲタとは、ない活字の代替として入れられたもの(余っている活字を逆さにして埋め込む)。「学校」の「校」や「夜」など、普段なら当然ある文字がゲタになっているのは、地震後、活字がケースから落ちてしまい、必要な活字がまだ鋳造しきれていなかったためです。
このような感じで、文選から校正刷りまでをひと通り見せていただきました。今後、順次校正を出していただき、校了まで進めていくかたちです。震災後、落ち着くまでしばらく進行が止まっていたこと、手作業での文選となることから、当初予定していたよりも、刊行が遅れてしまうかもしれません。でも、職人さんが一字一字ていねいに拾ってくださっていますので、どうか皆様、しばらくお待ちいただければ幸いです。